中高生のための合同文芸部の設立・運営

 文芸の発展には、文芸に触れる方の絶対数を増やすことが欠かせません。

 また、青少年世代の読書人口を増やすことは、文章読解力や想像力に富んだ人材が求められるこれからの時代においても重要な課題です。そこで当協会では、読書と文芸創作に重きを置いた部活動の設立・運営を計画しております。

 現在、日本の中学高校では、部活動の顧問や運営を民間団体が請け負う場面が多くみられます。そこで、これら民間団体が運営する部活動として、複数の中学高校の生徒さんを対象に、合同の文芸部を設立を行います。

 狙いとしては、

 ①古典文学や評論をはじめとした良書の読了を通して、読解力・想像力・思想および哲学を形成する。

 ②文芸創作に挑戦することを通して、創作の楽しさ、文芸への理解度を高める。

 ③文芸や文芸が持つ問いや哲学などについて語り合うコミュニティの提供。

 がございます。

 まず①について。この文芸部は「読書をする文芸部」です。情報が溢れた現代において重要なのは、「質の高い情報」を選ぶことです。日々世の中に出回る様々な情報を見分ける感覚を養わなければ、流言飛語に惑わされ、自分にとって本当によい行動を選ぶことが出来なくなってしまいます。そして世の中にあふれる断片的な情報のみの収集は、深い部分での理解を損なってしまいます。「情報」は、体系的に整理できなければ、却って人を迷わせてしまう恐れがあるのです。

 一冊の本は、情報を体系的に整理したものです。特に長く読み継がれている本は、時代によって磨かれたゆるぎない真理に迫った良書と言えるでしょう。私たちの文芸部では、小説のみならず優れた文章に触れることを通して、単に情報を得るだけにとどまらない知の獲得とその方法を会得します。

 次に②について。文芸創作――つまり小説や詩やエッセイ、または評論などを書いてみることです。そういうと何か縁遠い存在に思われるかもしれませんが、文章とは本来、自由闊達に書いてよいものです。学校の作文や読書感想文、卒業文集の多くは、暗黙の了解のように誰もが同じような文章になりがちです。私も学生時代、そのような様子に疑問を持っていました。どうして似たり寄ったりになるのかというと、おそらく多くの生徒さんは、どうやって書いたらいいのか分からないのです。「自由に書いていい」といわれると、却って困るのでしょう。それで、本当はもっと色々と言えることがあるのに、当たり障りのない書き方になってしまうのです。

 小説など本に出てくる言葉は、ただ読むだけでなく、使ってみることでその意味を一段と深く理解し、言葉を文字通り体得することが出来ます。文芸部は、文芸創作をとおして日常会話とは違うかたちで言葉を使い、「こういう風に書いていいんだ!」「自分で表現したいことが言葉にできた!」という経験を生徒さんに与えたいと考えております。

 最後に③について。近年一般化した言葉で、「推し」というものがあります。かつて、某アイドルグループのファンたちのなかで、自分のお気に入りの(推したい)メンバーのことを「推しメン」と呼ぶ文化がありました。それが変形し、好きになった有名人やコンテンツといった対象を「推し」と呼ぶようになったのです。SNSでは、プロフィール欄に自分が何の推しなのかを書くのはよくあることで、「推し」について語ることは、ネット上でよくみられるコミュニケーションといえます。

 「語る」ことは、個人の感情や知的整理にも有用ですが、人同士が物事への理解を深める上でも欠かすことが出来ません。殊に、一つの議題に対して対面で語ることは、読書を通して知識を身につけることと同じくらい重要といえます。最近では、動画投稿サイトでもインフルエンサーや知識人同士の対談や討論が多くみられます。

 互いの認識や知識を共有して、より深いレベルで物事を理解しようとする取り組みは、これからの時代において必須の能力と言えます。他人との共感や理解を求めながらも、孤独におちいりがちなのが現代です。文芸部では、文芸のことを中心に、生徒さんが学校のことや将来のことなどをざっくばらんに語れる場を提供いたします。

 文芸対話協会は、中高生の文芸部の設立・運営を通して、知的・知性的でありながらも人同士のつながりを尊重する読者のコミュニティを形成いたします。これらの設営・運営にあたり、各自治体様・企業様・団体様等へのご協力を仰ぐかと存じます。

 何卒宜しくお願い申し上げます。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です